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中国のエネルギー事情 (その1)
                                                      
                                                   

                                    2018-09-20 
 記 玉上佳彦

 

最近中国に行かれた方は、見慣れない薄緑色のグラデーションカラーのナンバープレートの自動車を見かけることが多くなったと感じることがあると思う。一般の普通自動車は青地に白の文字だが、この薄緑色のプレートは、電気自動車(EV)専用のナンバープレートである。中国の主要な大都市では、普通車のナンバーを入手するのに、たいへん高額の費用(場合によっては車の価格以上)がかかるのに対して、このナンバーは無料で入手できるそうだ。 

EV販売高は世界一

中国の2017年のEV車販売台数は47万台で既に世界一となっているが、中国政府は2030年には、1900万台としてEV大国を目指し、EV車優先策をとっている。
 最近、私は行っていないので、実感できないが、広東省深圳市では、バス、タクシーの大半がEV化されているそうだ。当然のことながら、大規模な高速充電スタンドも整備されているという。
 特に深圳には、世界最大規模の電池メーカー比亜迪(BYD)の大工場があり、この地元企業のためにもEV化を積極的に押し進めているようだ。BYD社の電動バスは、既に京都市に輸出されており、年内には沖縄にも輸出されるという。

中国の高速鉄道は、既に営業距離を2.5km(日本の新幹線は0.28km)となり、かつて主流だったディーゼル気動車は激減している。中国政府は、この高速鉄道網を全国の主要な都市に張り巡らし、更に東南アジア諸国まで拡張する計画であるが、そのためにも重要な電力源を確保する必要がある。

   
   天津市内で見かけた電気自動車(緑のナンバープレート)          天津市内の火力発電所            

 

火力発電が依然69

沿岸部だけでなく、内陸部の経済発展が顕著な中国では、果たして電力は充足しているのだろうかと心配になるので、中国の電力事情について調べてみた。
 2017年の中国の発電量は、火力発電が69.7%、水力が18.6%、風力が4.8%、原子力が3.8%、太陽光が1.8%、バイオエネルギー1.2%となっている(中国国家エネルギー局の統計データより)

現時点では、依然として石炭による火力発電が主だが、政府は国策としての大気汚染対策のために年々縮小せざるを得なくなっている。昨年から北部の都市集中暖房設備での石炭使用を抑え、天然ガスに強制的に切替えさせている。
 私が2004年に立ち上げた天津の新工場では、熱源として当時としては最新型の石炭ボイラーを設置したが、現在は石炭から天然ガスに切替えている。外資系企業が導入する石炭ボイラーは、排煙脱硫装置の設置が義務付けられていたのだが、北京・天津・河北省地区の石炭使用は、ほぼ全面的に禁止され、天然ガスを使わざるを得ないことになった。しかし、天然ガスの供給量には限界がある。
 河北省のある町では、暖房できないために、厳寒の学校では、教室内よりは少しはましな屋外で授業をしているということが話題になっていたのをご存知だと思う。


   
天津工場の石炭ボイラー                 天津市内のソーラーパネル
 

再生可能電源が急上昇

石炭火力発電に代わるものとして、中国の再生可能エネルギーの発電量は既に世界一となっていることは注目すべきで、更に拡大していく傾向にある。例えば、風力発電は世界第2位のアメリカの2倍以上、太陽光発電は同じく世界第2位のドイツの約2倍となっている(環境エネルギー政策研究所データ)。

中国には広大な未利用の土地があり、火力発電量を縮小し、風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電量を増やすことは容易であろう。これからも世界最大の再生可能エネルギー大国になることは間違いない。

中国の原子力発電については、次号で取り上げたい。

 

 
本報告書は、日中友好協会の機関紙「日中友好新聞」9月15日号の第1面に掲載
されたものです。                            

私(玉上)は、昨年6月から日中友好協会所沢支部の理事をしています。   
  当協会にご興味のある方は私宛に連絡下さい。